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++KEBkebKEBkebKEBkeb++軽井沢演劇部++KEBkebKEBkebKEBkeb++

部長便り

 毎年恒例となった軽井沢演劇部朗読会、この夏の作品は夏季展に合わせ、野上弥生子が翻訳した

小説「美しき世界」をお送りします。昭和15年、野上弥生子はエレナ・ポーター作「美しき世界」刊行の折に添えた文章で、主人公デイヴィッドについて次のように記しています。

 

「この神のやうな少年は、現代の日本の少年少女に是非欲しい友達で、もつとも欠けてゐる友達の

一人ではあるまいか。それ故私は感心しきつてゐる可愛い坊ちゃんを紹介するやうなつもりで、

 この書物を世に送るのである。」

 第二次世界大戦中、心の自由を守り続けた弥生子の児童文学に対する思いがわかります。

 

 原作者のエレナ・ポーターは、日本でもアニメになり人気を博した「少女ポリアンナ」が代表作のアメリカの女流作家。1916年にアメリカで出版された「美しき世界」(原題は[JUST  DAVID])は、彼女のもうひとつの代表作です。

 主人公デイヴィッドと、ヴァイオリニストの父親、農場主や村の人々が自然の中で織りなす物語は、20世紀初頭の、アメリカの典型的な清教徒の生活が描かれています。それはちょうど同時期、軽井沢に避暑で訪れていた外国人宣教師たちの精神とも重なります。

 ヴァイオリンの演奏によって自分の心を表現する謎の少年、その彼をなかなか受け入れることのできない人々。様々なエピソードを重ね、人種や宗教を越えてお互いを尊重し、認め合い「必要な人」になってゆく…。

 残念ながら世界は今なおどこかで争いが続いています。そんな今、「美しき世界」とは何か、そんな思いでこの作品と向き合います。

 

 今回、朗読劇台本では、野上訳を取り入れながら、2007年に岩波少年文庫から出版された、

中村妙子訳「ぼく、デイヴィッド」を使用いたします。

これまで、軽井沢演劇部はドイツ、フランス、ロシア、英国と、様々な国の文学を朗読して来ましたが、今回は初めて米国文学に挑戦。個性豊かな登場人物の楽しさを生かせるように、舞台俳優である軽井沢演劇部のメンバーが、これまでになく演劇的な朗読にしようと、頑張っております。睡鳩荘公演恒例の、鴨や蝉の鳴き声がぴったり合う?朗読劇「美しき世界」は、子供から大人までお楽しみ頂けると思います。

 

初夏の軽井沢、睡鳩荘で一同、皆様をお待ちしています!

「野上弥生子展」と共に、どうぞよろしくお願いいたします。

 

2017.4  軽井沢演劇部  部長 矢代朝子

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